「いぶき」打ち上げ延期で午後半休がガラ空きになったのもあり(苦笑)観てきました。
【まず感想】
できるだけ大きいスクリーンで見るべき1本。TV画面で見たら価値半減。
月面での打ち上げ(月着陸船離陸)の映像だけでチケット代払う価値はあった。
DVD 購入確定。もう1回は劇場で見たいな。
(前世紀なら「そのまま居座ってもう1回」ができたのに!)
【レビュー】
マーキュリー、ジェミニ時代についてはさらりと説明されているのみで、実質的にはアポロ 1, 8, 11, 13 がメイン。
全体の流れを貫くのはアポロ宇宙飛行士たちの
「パイロット」→「宇宙飛行士」→「月面科学調査隊員」→「月に行ったのは『自分』ではなく『人類』」
という意識の変化。
「米ソ冷戦による宇宙開発戦争」という側面は世相描写にとどまっています。
「サイエンス、テクノロジーに熱く燃える」のではなく「物静かで宗教的(※)とさえ言える人類礼賛、地球礼賛」。
※熱狂的・狂信的という意味でなく敬虔という意味で
「礼賛」が安っぽい(or 胡散臭い)ものになるギリギリで踏みとどまっているのは「本物の映像、音声」「実際に行った人間による語り」という重厚さのおかげ。
おそらく1カ所でも再現映像が挿入されていたら「礼賛」は一気に陳腐なものになったはず。
まるで冗談のように短いスタッフロールは「本作に再現映像や CG は含まれておりません」の証左ですね。
この「礼賛」を踏まえると、やはり日本版タイトルが『ザ・ムーン』という「モノ」を示すものなのが残念。『In the Shadow of the Moon』という原題は「モノ」でなく「人」を示すものだからね。
というわけで「燃える技術者魂」を期待すると肩すかしを食います。
(そういう点で日本版公式サイトは本作の雰囲気をよく表してます。
FLASH がどうにも重くてかなわないのには閉口しますが……)
【鑑賞前の注意】
最低限 アポロ 11 クルー3名のフルネームは頭に叩き込んでおくこと。
作中のインタビューではファーストネームのみで話が進行する部分もあります。
アポロ 11 月着陸船の名が「イーグル」であるという知識も必須。
余力があれば『ライト・スタッフ』のあらすじを把握しておくと序盤で語られている内容が理解しやすくなります。
【さらに感想】
エンドロール直前における「アポロ捏造説への集中砲火っぷり」が素晴らしい。特にコリンズ氏のコメントは必見。
ランデブーが大好きすぎて着陸船のコンピュータをパニックに陥らせたオルドリン氏とか、エレガントなまでに静かな表情で「月面車スピードコンテスト」を語るヤング氏とか、あんたら澄ました顔して何話してるんですか……。惜しむらくはビーン氏の「カメラぶっ壊しちゃった事件」@アポロ 12 が話に出てこなかったことだね(笑)。
一方で、戦闘機パイロットである友人たちがベトナム戦争に赴く中、宇宙飛行士であるという1点によって戦場へ行かずにいる(それどころか注目・賞賛されている)ことへの罪悪感、アポロ1の悲劇を知らされた時にその意味が理解できなかったという困惑、「もしもの場合に備えて用意されていた広報文」(すなわち同僚の訃報)を無表情に読み上げる姿などは重い。
それにしても、この映画で「ムーンリバー」は選曲を誤った。
(しかも短すぎるエンドロールに曲を乗せたためにラスト1分は画面が真っ暗)
本国公開版はエンディングに曲を乗せていなかったのではと憶測します。