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"SELENE Beckons" 非公式超訳
惑星協会と ISAS に訳文掲載についてメールを出してから1年以上リアクションがない。
お目こぼしいただいたものと受け取っていいのだろうか。



【原文情報】
"SELENE Beckons"
Lou Friedman (Executive Director, The Planetary Society)
ISAS ニュース No.318, 2007.09, pp11



あくまで在野の宇宙好きによる非公式超訳です。この訳文には惑星協会も ISAS も関与していません。
また、訳文は改行を追加しています。


「女神のいざない」
ルー・フリードマン(惑星協会事務局長)


ギリシア神話の月の女神セレーネは太陽神ヘリオスの後を追って空を駆ける存在です。
ですが今年はその順序が逆転します。日出づる国が月を目指して「セレーネ」を打ち上げる ── アポロ以来最大規模のミッションを指揮し、宇宙探査の新時代を生み出す。
この打上げで「セレーネ」は過去を記念し、同時に宇宙探査の新たな始まりを宣言することとなります。
「セレーネ」は、あの初の宇宙計画(※訳注)50周年を際立たせ、同時に私達が「国際的な月の10年間(International Lunar Decade)」と呼ぶ時代のまさに最初のミッションでもあるのですから。
(※訳注:1957年10月、スプートニク1打上げ)

私達はアメリカ人として、地球市民として、そして世界100万人近くを代表する惑星協会として、志を同じくする日本の仲間がこの素晴らしい試みを始めたことにお祝い申し上げます。
セレーネはハイビジョンカメラの映像で私達全てをバーチャル月旅行へ連れて行ってくれます。夜に外へ出て月を見上げ、今度は部屋に入って探査機セレーネによる軌道上からのクローズアップ画像を見る。これは素晴らしい体験となるでしょう。

セレーネは日本の民間伝承の月の姫君にちなんで「かぐや」という愛称がつきましたが、ハイビジョンカメラの他に13の機器を搭載していきます。
これらの機器で得られる新しい情報は月の成分、内部構造や周辺環境などに渡ります。
機器の中にはセレーネが搭載している2つの子衛星があり、その子衛星は母船から切り離されて月軌道を周回します。
母船との間で子衛星が果たす精密な測定は科学者が詳細な重力地図と月の地形図を作る手助けとなるでしょう。正確な軌道計算と将来における月面着陸機のナビゲーションに必要な情報です。
これは2つの子衛星が母船と協調して1つのミッションを試みる例としては初となります。

月探査ミッションは数多くありましたし、過去24人が月に到達しています。ですが米ソ冷戦終結に伴う宇宙開発競争の終焉とともに月への興味は薄れ、ここ数十年は月探査ミッションがほとんど立ち上げられませんでした。
しかし今や月探査の新時代が始まり、「かぐや」はこれからの10年に計画されている数多くのミッションの先駆けとなります。
今年の後半は中国が、同じく民間伝承の女性にちなんで名付けられた「嫦娥」を打ち上げる予定です。
インドとアメリカは2008年に月周回衛星を打上げ、ロシア、ドイツ、イタリアも数年内に打ち上げ予定の周回衛星を開発中です。
さらに、日本、中国、インドがすでに計画を発表しているのが着陸機、ローバー、自動サンプルリターン機構を搭載した衛星で、10年以内を目処としています。
アメリカは人類を再び月へ送る計画を開始し、世界中の14の宇宙機構は「グローバル探査戦略(Global Exploration Strategy)」と呼ばれる動きを近年に取り始めました。
GES は月、そして将来的には火星の有人無人の両探査に参加するためのものです。

なぜ月への興味が新しく出てきたのでしょう。
1つは月が太陽系への踏み石だからです。地球軌道以遠の宇宙探査に興味を持つ国ならどこであれ、月は自然な「はじめの一歩」です。
もう1つは、月の起源と進化についてはまだまだ未解決の謎が残っているからです。この謎が明かされれれば、科学者は太陽系全体の起源と進化の謎の解明へといざなわれます。地球と月の関係は二重惑星に近いものですが、それはこの太陽系の中で類のないものです。
(訳注:冥王星が惑星の定義から外れたため冥王星とカロンは「二重惑星」と呼べなくなったことに注意)
どのようにしてこうなったのか、他の場所では同様の状況がどのように起きるのかというのは非常に科学者の興味をそそります。

工学的な見地では、将来の宇宙利用に使える月資源が見つかると信じる人々がいます。
月に水があるという推測、月土壌がエネルギー問題に生かせる可能性、これらから政府や民間の宇宙企業が月に興味を抱いています。
現実的な公共事業の話は言うに及ばず、月資源についても現時点では純粋な仮説です。
この仮説に基づいたシナリオが現実性を帯びるかを見極めるための理学データを集めることがセレーネ・ミッションの主な目的の1つです。

セレーネによって得られる理学データと同じくらい大切なことは、セレーネ・ミッションが日本の存在感を地球周回軌道以遠に拡大するということです。
セレーネに導かれ、日本、そして月計画を進めている他の国々が米ロ合同の宇宙探査を可能にするでしょう。
宇宙探査によって得られる機会と利益は大きいのですが、ミッションが意欲的で大胆になればなるほど複雑化し、費用がかかり、危険になるということを私達は経験しています。一国で全てをまかなう余裕はありません。
宇宙探査では、国家目的と同時に人類の活動範囲を外へと広げるための視点を保持しつつ多国間がお互いに協力・競争するような共同の取り組みが必須となるでしょう。
「かぐや」はその協力・競争の典型です。
日本の意欲的な宇宙開発を具現化すると共に、国々が世界規模で新世界を探査する「国際的な月の10年間」の立ち上げでもあります。

私見ですが、宇宙探査の最初の50年における最も重要な利益は人類が地球という己の住む惑星に対する新しい理解と価値を見いだしたことでしょう。
アポロ月計画での「月から見た地球の眺め」は地球観を大いに変えました。文化的にも、政治的にも、環境の面からも。
今の時代にあって、その変化は今まで以上に大切なことです。

「かぐや」が月、地球、太陽系に関する私達の理解をどう変えてくれるかは未知数です。
既に分かっている通り、探査というのはいつも驚きを与えてくれるものです。
私たちはそれを切に待ち望んでいます。
宇宙&天文 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | by すばる
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