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武豊町「はやぶさ」実物大解説用模型製作チーム談話(3〆)
武豊はやぶさ実行委員会の実物大解説用模型製作ドキュメンタリその3。

製作指揮をとられたMさんに頂いたメールをご本人の許可を得て転載しています。
-------------------以下、転載-------------------

【イオンエンジンについて】
最後に「イオンエンジン」ですが、これも苦労しました。
まず、4つあるスラスターのイオン源の円盤状の金属製の枠を如何に再現するか?でした。
予算もないので、金属加工で製作するわけには行かないので、ホームセンターに入り浸って、なんとか近いものを探しました。
イオンを加速する「カーボン・カーボン複合材」のグリッドは100均で入手した園芸鉢の底に引く網状のシートを使いました。
本物はもっと細かいグリッドですが、なんとか雰囲気は再現できました。
中にキセノンのイオンの色を模した青色LEDが入っていて、暗い雰囲気で点灯すると、暗い宇宙空間でイオンエンジンで進む「はやぶさ」の姿が、蘇ってくるようでした。
イオン源以上に難しかったのは、「中和器」でした。
なにぶん私たちは、JAXAのはやぶさの写真以外には、「中和器」の図面などの情報はなかったので、かなりの部分を想像のもと製作しました。
なんとか、キセノンガスの配管や、給電ケーブルなどを再現してますが細かい所は本当に適当で、正確ではないと思います。
ただ、不正確なりに、手作りで丁寧に作ってあるので、それなりの雰囲気は出ていると思います。


【模型を用いてのイオンエンジン解説について】
武豊町での展示の際には、このイオンエンジンの部分を使って、イオンエンジンの原理や、奇跡のクロス運転についてお客さんに説明しました。

目の前にある、青く光るイオンエンジンが、「はやぶさ」のもっとも重要な技術的なミッションであること。
そのエネルギー源は、この大きく広がる太陽電池が太陽から得る電気であり、そのエネルギーで加速されて放り出されるキセノンがある限り、エンジンは動作すること。
だから燃費が良いということ。
しかし、希薄なガスを噴射する原理なので、わずかに1円玉の重さ程度の力しか発生しないこと。
しかしそんなわずかな力でも、目の前にある見るからに重い「はやぶさ」であっても、「ゼロ」ではない加速度が発生するということ。
またその押す方向は、姿勢を崩さないように「はやぶさ」の重心を貫く必要があり、そのために4つのエンジンは、微妙に傾いていること。
わずかな力でも、「ゼロ」ではない加速があるため、長時間運転することで「イトカワ」のような遠くの天体に到達できること。
そのためには、「耐久性」「信頼性」が、このイオンエンジンの最も重要な性能であり、「はやぶさ」の重要なミッションのひとつであったということ。
そして長時間の運転のためには、マイクロ波方式という耐久性に有利な方式を採用していて、これが日本オリジナルの技術であるということ。
そして、目標を超えた長時間運転でも、ついに最後に力尽きてしまったイオンエンジンであったが、健全なこのイオン源とその中和器を組み合わせる運用を行ったことで、最後の一押しができて、地球に戻れたということ・・・・。
その決め手となったのは、技術者が最後にこの電源ユニットに組み込んだ、この小さな部品のおかげだったということ(小さなダイオードを観客に見せながら)・・・
こうした「はやぶさ」の最も重要なミッションや感動的な帰還劇について、実物大の模型を前にしながら説明をして、それで理解していただくということは、本当に意味のあることだと思います。
実際解説していても、平面状の資料を使って説明するよりもずっと解説し易かったですし、お客さんもよりよく理解いただけたと思います。

私たちが、この模型を「はやぶさ解説用実物大模型」という名称で呼んでいるのも、こうした想いがあって、ぜひとも解説に活用してほしいと思っているからです。


【+X面(IES面)】
放熱板のエンボス加工は、これは本体に紙ハニカム材を使っていることから自然に生まれる凹凸だと思います。
私たちの紙ハニカムのセルサイズは、1センチくらいあるのですが実機のアルミハニカム材のセルサイズはもっと細かいようで、実機の場合はもっと細かいエンボスになるのでしょうかね・・。


【アンプ(川口教授がサインされた白いプレート部分)の穴】
これは、帰還カプセルを担当してくれた技術者の方がこれ一筋で担当してくれた最高の一品です!
私は「もっと適当でいいのに」と思っていましたが、彼は写真からコピーで拡大して穴の位置を全部寸法拾って作り上げてくれました。
最後の最後に角の部分が欠けてしまった時は悲鳴があがりましたが瞬間接着剤で修繕していちおう無傷で完成となりました。
一部光の関係でグラディエーションっぽく見えている部分も、印刷して貼り付けるなどの凝りようでした(^^;
この部品のおかげで、模型では「命」となる前面の雰囲気が一気に締まって、模型全体のリアリティが高まったと思います。
実は、彼は製作中、「この部品は一体何の役割なんだろう?」とずっと思って製作していたそうです。
私もわからなくて、下記の川口先生の講演会の際にもお尋ねして、「アンプか何かの放熱板かな?」と教えてくれてようやく「そうなんだ」ということとなりました。(^^;


【模型公開、その日】
私たちはこの模型を一般にお披露目するXデイ(まるで打ち上げ予定日ですね)を8月1日の川口先生の講演会にターゲットしていました。
ぜがひでも、この日に間に合わせようと。

なぜなら、2003年5月にM−Vロケットで打ち上げられて以来、最後は大気圏で燃え尽きてしまった「はやぶさ」に、川口先生に8年ぶりに再開してもらいたいと思ったからです。
最高の演出のもとで、感動的にです。

当日講演が終わったあと、司会の私は「防塵服」に着替えて登場しました。

「ちょっと変わった服装で登場しましたが、これなんだと思います?
実はこれは、防塵服といって、はやぶさのように精密な装置を組み立てるときに、人から出る小さな塵が影響をしないように、エンジニアが着る服です。
実は私たちは今日の日を目指して、「はやぶさ」の実物大の模型を制作してきました。
もちろんこの服を着て製作したわけではないのですが、今日はちょっと雰囲気を出して、着てきました。
さて、川口先生とみなさんにサプライズのプレゼントがあります。・・・」


という形で、サプライズを川口先生と観客のみなさんにお伝えしました。

そして舞台の照明が落とされると、儚くも美しい女性の声による素敵な音楽がスタートして、先生がプレゼンで使用していたスクリーンがそろそろと上がりました。
そして1回目のタッチダウンで失敗して、イトカワ表面に不時着していた姿を再現した「はやぶさ」が、淡い照明の中に浮かび上がってくるという演出で、みなさんに披露されました。
背景には、演出用に星がちりばめられていました。
会場は割れんばかりの拍手となりました。アンケートには、「涙が出た」という感想もありました。私も涙が止まりませんでした。
音楽と照明の効果で、3億キロかなたで、ひとりで「イトカワ」の灼熱の表面に不時着して横たわる「はやぶさ」の姿が、印象的に再現できていました。

もっとも川口先生は「よくここまで作りましたね!」とあきれたご様子のお褒めの言葉をいただきましたが、私たちがかすかに期待していた「涙」まではありませんでした(^^;
その上で

「この展示姿勢は実現するのは困難だけど、最適な姿勢。よく実現できましたね!」


とも評価いただきました。
さすが川口先生、すぐにこの展示姿勢の利点を見抜いていただきました。そして

「この姿勢は、おかしな姿勢ではなく、タッチダウンの最終段階はここまで傾いてイトカワの自転にあわして降下することも想定しているんです。
だからこの姿勢は「失敗」の姿勢というだけではないんですよ!」


ともお伝えいただきました。


【武豊町での「はやぶさ」特別展示について】
「芸術と科学のハーモニー」をテーマとする私たち武豊町の文化創造施設「ゆめたろうプラザ」では、「芸術」と「科学」の双方からのアプローチで、人々に「真理」を追及する感動を伝えたいを思ってさまざまな活動を行っているのです。
なのでこうした「舞台演出」はお手のものなのです。
全国の「はやぶさ帰還カプセル展」は多くは科学館で実施されます。
私どものような「ホール」で実施されるところは少なく、それが逆に私どもの強みでした。
なぜならホールはただの「入れ物」であり、中に入れるコンテンツに合わせて最適な見せ方を設定できるからです。
私たちは何度か科学館での展示を見学しましたが、ただでさえ「カプセル」のみの展示では地味な上に、科学館にある通常の展示物が回りに存在する環境では、「はやぶさ」を尖らせて伝えることは逆に難しいと思いました。
実際私たちも、こどもたちも、通常展示の方に眼が移ってしまうようなこともありました。
もちろん普段いかない科学館に行く機会といえばそうなのですが、「はやぶさ」をしっかり伝えるのにはいまひとつ物足りない展示で、そのとき、科学館での企画展は、逆にコンセプトを尖らせることは難しいと思いました。
そこで私たちは、ホールをすべて「はやぶさ」一色にして、4日間は、「はやぶさテーマパーク」としてしまったわけです。

ご存知のように、あらゆる町内のリソースが「はやぶさ」一色に投入されました。
「大型紙芝居によるはやぶさ物語」や施設で活動を行っている講談サークルによる「講談はやぶさ物語」などは、真骨頂です。「ぺぺん、その時はやぶさは!」と来るわけです(^^;

私たちのイベントには合計で1万4千名が来場いただきました。
しかし、通常の「カプセル展示」とは異なって、さまざまな「はやぶさの学びを伝える展示」がありました。
それぞれを書き出すとまた何時間もかかるのでここでは止めときます。
いずれにしてもそのおかげもあって、一人の来場者の滞留時間は、帰還カプセルを見るだけの展示に比べると、1桁違うのではないかと思うほど、一日中「はやぶさ」一色で楽しんでもらえる企画になったと思います。
その意味で、私たちのイベントで市民の方に伝えたコミュニケーション量をもし計れたとすれば、通常の科学館でのイベントにくらべると1桁大きいのではないかと自負しています。
これは、会館以来、市民参加のもと文化活動が推進されてきた、武豊町のひとつの成果だと思いますし、それを勧めてきた団体のひとつであるNPOで活動する私たちの誇りでもあります。

-------------------転載ここまで-------------------


Mさん、転載許可本当にありがとうございました!
そして改めて言いたい。武豊町、本気すぎ!
宇宙&天文 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | by すばる
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