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BepiColomboによる水星探査〜太陽系最内縁の過酷な惑星への挑戦〜
「BepiColomboによる水星探査〜太陽系最内縁の過酷な惑星への挑戦〜」

話者:西野真木
   (宇宙プラズマ物理、BepiColombo MMO運用計画立案)
於 :東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館
日時:2012/07/27 13:00〜14:00
※会場撮影禁止

なお、実際の講演ではBepiColomboが「ベピ」と呼ばれていましたが、本レポではすべて「BepiColombo」で記載してます。


34℃という猛暑の中おいで下さりありがとうございます。しかし水星はもっと暑いです!(会場笑)
今日は知識の切り売りではなく、現場が何にわくわくしているか、または何に苦労しているかをお話ししたいと思います。

ではまずこの絵を。
http://www.nasa.gov/mission_pages/messenger/multimedia/messenger_orbit_image20120615_1.html
先日NASAが発表した水星の地形ですが、アメリカですからね、彼らはこれを「ミ」で始まるネズミに(会場笑)喩えています。
日本人なら信楽焼のタヌキでしょうか。


【本日のトピック】
1.なぜ水星?
 - メッセンジャー以前の探査
 - 水星の基礎知識はほとんどない
 - BepiColomboで知りたいこと
2.BepiColomboのミッション設計
3.進行状況(2015年打上げ予定)
4.最新の水星探査成果が意味すること


【1.なぜ水星?】
水星の公転周期は87.97日。
軌道半径は平均して0.3871AU。
太陽系惑星の中でもっとも太陽に近いので「水金地火木……」と、最初に挙げられる。
以前FMさがみさんの取材を受けたときに「必ず最初に呼ばれるが、そんなに水星は偉いの?」と問われてどうしようかと(笑)。

(金星、地球の軌道を除去した太陽系惑星軌道図を出して)
ここらへんを「あかつき」やIKAROSが飛んでいるのですが、邪魔なので(会場笑)今日は消えてもらいました(笑)。
水星の公転面は地球の公転面より7°ほど傾いています。月は5°くらい。
図を見てわかる通り、水星の軌道は近日点・遠日点の差が大きいです。

[ポイント] 太陽風は地球付近より水星付近のほうが強烈

[水星の物理的特質]
  半 径 :2,439 km([参考]月:1,738 km/地球:6,378 km)
  密 度 :5,430 km/m^3
  表面温度:90〜700 K(-180〜430 ℃)
       相模原より暑いです(会場笑)

[自転・公転]
水星の時点(58.65地球日)と公転(87.97地球日)は 2:3 の関係で同期している。
水星の1日は176地球日。
水星が太陽を2周する間に、水星の表面では「1日」になります。

[密度]
マリナー10号のフライバイ観測によって水星の質量が判明しました。
密度が大きいことから鉄の核の存在が示唆されます。これは固有磁場の存在と整合的です。
また、密度を考えると核が大きい可能性があります。

[外核と固有磁場]
核が流動する → 電流が発生する → 磁場が発生する
という関係から、磁場の有無は天体の内部構造を反映します。
太陽、地球、木、土、ガニメデは磁場を持っています。

[太陽風プラズマ、磁場、惑星磁気圏の相互作用]
マリナー10号(1974-1975)
 - 水星が弱い固有磁場を持つと(ほぼ)明らかにした
 - 水星には小さな磁気圏があると推測される
 - その後の調査はなされていない(探査機が行っていないから)

水星磁気圏
 - 太陽風との相互作用で起きるのがオーロラ
   オーロラを見たことある人は?(会場内で挙手者あり)羨ましいです。
   知人でオーロラの見える場所に家を建てた人がいるのですが、
   「最初は見とれていたけどその内に見慣れて何とも思わなくなった」と。
   殴ってやろうかと!(会場爆笑)
 - 水星の磁気圏は小さい。ということは磁気圏に占める惑星のサイズが大きいということ。
   地球の磁気圏は150,000km、水星は10,000km。
   地球、水星それぞれの磁気圏の類似点、相違点を調べる必要がある
   水星の磁気圏を調べるには探査機を水星の近くに飛ばさなければならない。
 - 磁気圏があれば太陽風に対して安全か?答えはNO。
   水星の磁気圏には極付近に隙間があり、そこから太陽風が地上に到達してしまう。

水星の大気
 - 水星は濃厚な大気を持たないため、隕石はそのまま地表に到達してしまう。
 - 水星大気はナトリウム。地上では分子の数で 10^5個/cc 程度の濃さ。
   地球の1兆分の1程度の気圧。
 - 大気の生成メカニズムには諸説ある。
   月にもナトリウムの希薄な大気がある。生成メカニズムは水星と同じなのだろうか?

ここまでのまとめ:水星磁気圏の現象は地球磁気圏的でもあり、月プラズマ的でもあるだろう。


【2.BepiColomboのミッション設計】
何を、どのように、いつ調べるかというのがミッション設計。

[何故水星探査は困難か]
1:太陽に近い → 光と熱の条件が厳しい
2:探査機が水星に近い → 水星の昼の面から熱が来る。逆に夜の面は極めて低温
3:地球から遠い → 通信条件が厳しい
4:水星の物理的特質に不明な点が多い → 特に重力が不明というのは水星周回軌道を考える上で大きい

[過去の水星ミッションを参考にしようにも……]
1974-1975 マリナー10号
2007-2010 メッセンジャー
部活に入ったら先輩が2人しかいません!(会場笑)
また、内惑星は地球の地上観測も困難です(日中観測になるため)

[BepiColombo プロジェクトについて]
2015年08月 打上げ:クールー(仏領ギアナ)からアリアン5にて
2022年01月 水星到着
MPO(地表観測/ESA)とMMO(磁気圏観測/JAXA)のペア
ミッション名の由来はイタリアの数学者ジュゼッペ・コロンボ(1920-1984)。
  水星の自転・公転の周期の同期について数学的に解明した。
  マリナー10の軌道設計も行っている。
  http://smsc.cnes.fr/IcBCO/Bepi.png
  (via http://smsc.cnes.fr/BEPICOLOMBO/ )

[良い軌道とは?]
公転面軌道とか極軌道とかあるけれど、近くも遠くも見たいので………
http://www.stp.isas.jaxa.jp/mercury/images/orbit_bepi.gif
( via http://www.stp.isas.jaxa.jp/mercury/p_bepi-j.html )
※すばる注:上図で 400km となっている近水点高度は 600km に変更になっています。後で軌道についての言及あり。

そんな軌道で熱的には大丈夫か? ダ メ で す 。 普通なら、ね。
水星の軌道は離心率が高いので、
・水星が近日点付近にいる時……探査機の近水点では水星が夜の面になってる
・水星が遠日点付近にいる時……探査機の近水点では水星が昼の面になってる
という軌道にすることで熱条件を緩和します。

[打上げから水星到達まで]
2015年08月にギアナから打上げますが、私はお留守番です。
以前行った人によるとワニがいたり黄熱病リスクがあったりだそうで、いやあお留守番で良かったなと(会場笑)。
水星周回軌道に入るまでは金星スィングバイを2回、水星スィングバイを4回かけて軌道を下げていきます。

[MMOの機体について]
http://www.stp.isas.jaxa.jp/mercury/images/isas_BepiColombo1B-e_s.jpg
(via http://www.stp.isas.jaxa.jp/mercury/images-j.html )

機体の両側からそれぞれ5mのトラス。その先に磁気アンテナ。
機体自体の幅もあるので、トラスの端から端までで12mくらい。

MMO
 スピン安定
 近水点高度 600 km
 遠水点高度 11,624 km
MPO
 三軸制御
 近水点高度 600 km
 遠水点高度 1,300 km


【3.進行状況】
2012年秋から総合試験開始予定。
熱問題が厳しい。
  データ送るのも大変。でも頑張る。
  観測機器のスイッチ入れるのも大変。熱が出るから。
  とにかく暑すぎるので本体を鏡ばりにしたりしています。
  運用計画は綿密に立てているところです。
熱解析については省略しまして……。
オランダで、地球近傍の10倍の太陽光を再現した光をあててテストしました
http://www.esa.int/images/BepiColombo_Testing_H.jpg
(via http://www.esa.int/esaMI/Space_Engineering/SEMCL2BE8JG_1.html )
90%以上は大丈夫……ちょっとコードが焦げたりしましたが……まあ大丈夫!

電源やアンテナをONできる時間は限られます。(熱条件のため)
仮に地上から見える位置にいても通信できない時間があるということです。
また、通信速度は低速です。
限られた時間と低速度の通信でどうするか、運用計画を作り込む必要があります。
通信はロー、ミディアム、ハイの3種類。主にミディアムを使用することになります。


【4.最新の水星探査成果が意味すること】
メッセンジャーの最新成果からわかることは「水星の謎を解くにはBepiColomboでの観測が必要」ということ。
ダイポール磁場が北側にずれている「可能性」が示唆されています。
メッセンジャーの軌道では南半球の観測が難しかったので、BepiColomboによる南半球観測が必要です。
もし本当にずれているとしたら、水星は南北で表面進化が異なるかもしれません。
2022年、メッセンジャー、MPO、MMOの3機で水星を調べます!
ところでBepiColomboの話をすると、よく「いつ地球に帰ってくるの?」と聞かれるんです。殴ってやろうかと……。(会場笑)

[何がわかるか?]
 - 水星そのもの、
 - 水星磁気圏と外圏
 - 地球との比較
 - 月との比較
 - 内部太陽圏
それだけではありません。
 - 水星の内側に惑星がないのは何故か?
  ホットジュピターを見ると「惑星が形成されてから内側の軌道に移った」という可能性も考えられます。
  惑星系の形成(特に地球型惑星形成)の理解につながる


【質疑応答】
Q. MMOはどこで運用する?
A. MPOはESOC(独)が運用。分離された後のMMOはJAXA(日本)が運用。場所は相模原。

Q.地球よりも太陽に近いわけだが、フレアが起きたら?
A.電源を切ります。
  「発生から9時間くらいすれば大丈夫」と言ったことがあるのですが、2日くらいは影響があるでしょう。

Q.水星に行く途中、何か観測するといった予定は?
A.サンシールドの内側でアンテナもたたんでいるので無理。やりたかったけど。

Q.ペネトレータなどを用いての直接的な内部観測は?
A.難しいです。
  水星周回軌道投入後、重力異常によって水星の内部構造を推定することはできます。
  メッセンジャーによると重力異常はあるようです。
  当初予定ではBepiColomboは近水点 400 kmに投入する予定でしたが、
  水星の物理的特性に不明な点が多いので 600km に変更されました。
  「低い軌道に入れてこそ重力場がわかるんだ!」と主張したMPO担当の方もいたのですが、
  探査機死なせたら本末転倒でしょ、何考えてるの!(会場笑)
宇宙系イベント報告/翻訳 | permalink | comments(2) | trackbacks(0) | by すばる
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コメント
レポートありがとうございます。
宇宙学校に参加して、講演の前半を聞き逃していたので助かりました。
のぞみ、あかつきのリベンジ、うまく水星の軌道に乗ってほしいですね。
| しのしの@大阪 | 2012/08/08 12:42 AM |
今回は講演のハシゴが難しい(意図的にハシゴできない?)セッティングでしたねえ。
久々にレポやったらすっかり腕がなまっていることに気づいたわけですが(とほほ)、お役に立てたなら幸いです。
| すばる | 2012/08/20 11:14 PM |
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