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はやぶさ&はやぶさ2座談会レポ(1)
日時:2017/06/11 13:00〜15:30
於:相模原市立博物館(神奈川県)
第一部話者(敬称略):
・川口淳一郎
・國中均
・井上潔(アグン株式会社。20世紀フォックス「はやぶさ/HAYABUSA」プロデューサー
・菊池淳夫(東映株式会社。東映「はやぶさ 遥かなる帰還」プロデューサー)
・田村健一(松竹株式会社。松竹「おかえり、はやぶさ」プロデューサー)


注:かなり話を単純化しているので口調やニュアンスは欠落しています。ご容赦ください。
【「はやぶさ」を題材にした映画作成のきっかけ、伝えたかったこと】
[井上]
最初に知ったのは帰ってくる前。ここ(相模原市立博物館)のプラネ映画に心動かされた。
(注:「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」と思われる)
この作品で十分じゃないかと思った。多くの人が「はやぶさ」と宇宙について考えさせられる作品。
同作を見た知りあいが「日本でこんなすごいことをやっている」と言ってきたほど。
自分たちの歴史、日本の宇宙開発への想いの広がりが同作に結実したのだとおもった。
同作に登場するのは「はやぶさ」一機だが、その裏にあるのは多くの人間。
その人間たちについて伝えたいと思った。

[菊池]
知ったのは地球帰還後。報道で知った。
調べたらたいへんな旅をしていたと知った。
それを頑張って応援し戻した人間はどういう人たちだったのかと興味を持った。
渡辺謙氏に川口淳一郎というリーダーを演じてほしいとオファー。
普通ならシナリオがある程度できてからオファーするが、その時はシナリオ未完で「はやぶさ」が題材とだけ。
渡辺氏は快諾。
井上さんも言っていたが人間を描く映画にしようと思った。
東映の他にも松竹、20世紀FOXを始めとする多くの映画会社やTV局からオファーがあったと知った。

[田村]
知ったのは地球帰還翌日のワイドショー。
ダイジェストを見てすごいミッションだと思った。これは映画になるんじゃないかと会社で話題に。
井上さんや菊池さんが既に語ってくれたので私は彼らが言わなかったことを言わないといけない。(会場笑)
自分たちは「他社がやらないことをやろう」というスタンスなので。
日本の宇宙開発は様々な成功、失敗を踏まえた上で「はやぶさ」につながった。
成功したからといって奢ってはいけない、成功しなかったからといって悔やんではいけないと伝えたかった。


【映画化と聞いて】
[川口]
驚きですよ。全部で8社からオファー。3社も残って驚いた。
東映の坂上プロデューサーは話が決まったかのごとくにプレゼンを持ってくるが実際は何も決まってなかったという。
井上さんはすごく急いでた。鬼気迫る勢いで質問してきた。

[井上]
「最初にやらないと(公開しないと)ダメ」って20世紀FOXが言うものですから……。

[國中]
自分は詳しいディテールについてよく知らない。
各社の取材を受ける中で東映の脚本の西岡さんと話をした。
彼は「人を描きたい」と言うのだけど自分はハードウェア側の人間なので人間にフォーカスする感覚がわからず、技術の話をすると西岡さんは「人間同士の軋轢がないと映画にならない」と。(会場笑)
井上さんにも「そりゃ(その描写は)おかしい」と言ったんだが、言っても採用してくれなかったw

[菊池]
西岡いわく「リーダーが務まる人はただの善人じゃない」。
何かあるはずと思って國中先生にお酒を飲ませて川口先生の悪口を言わせようとしたが全然言わない。(会場笑)


【俳優、人物描写について】
[川口]
スタッフ内で「髪の分け目が違うよね」とかいう話はした。(会場笑)
20世紀FOXでポットにお湯を入れるシーンが出てくる。
ああいうのって撮影してから編集するの?
東映ではお湯の場面がなくなって、神社でかりんとう食べるシーンになってた。

[國中]
各役者さんについて、特段問題ありません。(会場笑)


【多くの会社がオファーを出した中、ラスト3社として残った。諦めなかった理由は?】
[田村]
通常は原作1つに対し映画1作。
今回は大手町(JAXA東京事務所のことか?)に打診。OKが出なければ作れないが、3社にOKが出た。
他社もOK出たがどうする?と本社にお伺いを立てたら「やらなくてどうする!」と叱咤された。
他社との差別化を図って3Dにしたり、過去、現在、未来の流れとして「のぞみ」、IKAROS を取り入れたりした。

[菊池]
弊社はハッタリ。もともとヤクザ映画の会社だからw
金勘定(皮算用)をした結果、うまくすれば3社全部勝ちになるんじゃないか?と。
会場で3社の作品全て見た方は?(会場挙手を見て)狙い通り。(会場笑)

[井上]
3社が同一素材で映画を作るなんてまずない。
こうして並んで座ってるけどライバル会社だよ?
「売れるかどうか」で決めるもんなのにここに3社仲良く並ぶって、なんでこんなことになってんの!
みんなこの映画を作るべきだと思ったんだろう。
8社集められた時、私は川口先生に質問できる機会なんだと思った。行ったら各社のプレゼン大会。
私はとにかくこの映画をつくるんだという気持ちが強かった。
JAXAは「一社にOK出したから他に出さない、ということはしない」と宣言。
だから残った理由としては、他の5社より我々3社は気持ちが強かったんだろう。


【映画化で身の回りに変化は?周囲の反応は?】
[川口]
私が出演したわけじゃないからねえ……。
「感謝」という気持ちは強い。
科学技術は映画にならない。外国からも言われるのは「(映画になるなんてアウトリーチとして)こんないい例はない」と。
文部大臣、総理大臣に代わって(会場笑)感謝します

[國中]
特段変化はない。
よく映画の題材に取り上げてもらったなと思う。我々の無人探査は世界的に見て小さな予算でやっていて、研究者やエンジニアの努力がフォーカスされることは少ないから。


【自分自身におきた変化、周囲の反応は?】
[田村]
変化、ですか………。(かなり困った様子で考え込む)
私自身について言えば、人事異動で映画制作部門から演劇部門に移ったこと……?(会場笑)
宇宙屋さんと映画屋さんの気質は近いなと思った。「1つのプロジェクトに関わる、それぞれ異なる分野の専門家集団」という同じ匂いがする。


【菊池さん、制作中に不思議に思ったことや苦労した点は?】
[菊池]
困らなかった。
公的機関の多くは撮影許可を得るのが大変。撮影でいろいろ制限がかかるのを相手が嫌がるから。
だがISASは「この人たち撮影されることに慣れてるの?』と思ったくらい協力的。
20世紀FOX、東映、松竹の順で撮ったけど「それより前にどこかがここで撮影やった?」「この人たち、自分たちで撮影ができるんじゃね?」というくらい段取り良く。
公的機関でここまでこちらの意図を汲んでくれるところはなかった。
ものづくりやってる人たちだから相入れるんだろうか。
(注:なお、建物外観だけなら「踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!」で使われたことがある)


【井上さん、ISASの人たちはどうだった?】
[井上]
変わった人がたくさんいてすごく面白かった。
中途半端じゃない、それぞれ違う方向で極端までいかないとできないことをしている人たち。
緻密な人、大胆な人、全体的視野を持つ人などなどが高い密度で混合している。
ISASが大事にしていることの1つが「伝える」こと、という意思を感じた。それが協力的だった理由の1つだろう。


【川口先生、プロジェクトリーダーをやってのご苦労、やってよかったことは?】
[川口]
よく講演でそういう話を乞われて、そうじゃないって言ってる。
映画製作とプロジェクトの繋がりについていえば、出だしからそう。上から言われてやるのではなく現場からやりたいという。
出だしが一番大事だと思っている。そして一番おもしろい。いろんなアイデアが出るから。
いざ始まると正反対。ヒト・モノ・カネの制限の中で何を削って何を残すかという話になるから面白くない。
ものをつくっていくプロセスが大事。ディスカッションして作っていき、できたというのが嬉しい。


【國中先生、プロジェクトのご苦労は?魅力は?】
[國中]
新しいものを形にするのが我々。実験室だけでは宇宙エンジニアになりえない。宇宙に出さなければ。
自分はイオンエンジンをやっているが「はやぶさ」だけがターゲットなわけではない。SFUにも乗せている。
載せると決まったら予算、性能が決まり、それにあったものを作っていくことになる。
「はやぶさ」では川口先生にぎゅうぎゅう言われたイメージしかない。(会場笑)
「はやぶさ2」も予算や時間がなく、そんなんばっかりで疲弊した。
2011春に映画の撮影が開始したが 03/11 に東日本大震災。
電力をはじめとしたインフラがダメになって映画の話はお流れかと思ったら、映画屋さんは発電機なども持ち込んで頑張る。
自分たちもインフラがないウーメラに機材を持ち込んでやったけど彼らのスケールはすごい。
砂漠とかでの撮影もあるのかな?プロだなすごいと。
自分たちも彼らもそれぞれ全力でやったのだということを御記憶ください。


【各社、自社作品の中で好きなシーンとかこだわりのシーンは?】
[井上]
それについて事前に考えてて、3作に対しての批評を30分くらい聞いてた。
カンガルーのシーンがものすごくダメだしされたんですが(会場笑)あれは元ネタあるんです。
カプセル担当の山田さんはものすごいプレッシャーを覚えて「オーストラリアは車とカンガルーの事故が多いというけど、カプセルがカンガルーにぶつかったらどうしよう」と夢にまで出たんだって。
(注:劇中で衝突でなく「持ち去り」になったのはおそらく曽根さんのエピソードに基づく)
そういう担当者の想いを映画に出したかったんですが……東映の坂上さんも「あのカンガルーなんなの」って……。

[菊池]
気に入った場面のスチルを出してほしいと言われていたけど、大人の事情で俳優や劇中の写真を出せません。
この写真を出したい。(相模原キャンパス「はやぶさ」STMと子供たちの写真)
この写真を見て映画制作がはじまった。
坂上に「菊池、これを見ろ。この子たちこんな嬉しそうな顔してるんだぞ」と。
夢を育てることがこの映画のテーマかな。ものを作るのは楽しいこと。

[田村]
大人の事情に鑑みず(会場笑)劇中写真を出します。
主役とその父親であり「はやぶさ」イオンエンジン担当と「のぞみ」プロマネ。
ありえない取り合せだが、東映さんがヤクザ映画の会社ならうちは家族映画の会社。
当時宇宙研にいた阪本先生に話を聞いて「のぞみ」と「はやぶさ」が繋がった。その後の取材で IKAROS を知る。
これは「キャプテン・ハーロック」などで子供の頃自分が夢見た宇宙帆船になるんじゃないかと想像。これは出さないといけない。
そうして「のぞみ」「はやぶさ」、IKAROSという3世代が繋がった。


【川口先生、國中先生、「はやぶさ2」への期待は?】
[川口]
自分は「はやぶさ2」という名前に反対した。
「はやぶさ」は実験機。今回は「2番目」でなく「本番の一番機」。
「成功して当たり前」というプレッシャーをかけず「本番機としての挑戦」を見守ってほしい。

[國中]
今後ろにいる(第2部「はやぶさ2」トークの)メンバーへの期待を。
「はやぶさ」は溶けてしまったが「はやぶさ2」はアライブなミッション。裏話とか軽々しく喋らないでね、国家機密だから。
第2部はつまらなーいトークになると思うよ。(会場笑)


【会場質問】
Q:本当に魚を定規で食べてたの?
[井上]
難しい質問w 長い宇宙研の歴史では誰かやったと確信してます。(会場笑)

Q:「祈り」「HBTTE」、実写3作品。描写の科学的間違いへの不安はあったか?チェックはしたのか?
[川口]
「祈り」「HBTTE」は吉川さん(吉川真准教授)が監修。
「HBTTE」で上坂さん(監督の上坂浩光氏)に聞かれたのは「ラストはこれでいいですか」くらい。
(注:2009年公開でリエントリと消滅を描いていいか、と確認があったことを指す)
私はあまり(有)ライブの作品(注:「祈り」「HBTTE」)の描写チェックをしなかったが、05/15のライブ作品一挙上映イベントで気づいたのはロケットが左回りスピンだったこと。ライブさんは革新的な(注:ここ大意)作品を作るから左巻きなのかな。
ライブ作品にはたくさん応援してもらった。「はやぶさ」のイオンエンジンが止まったときは真っ先に「上坂さんに申し訳ない」と思った。

Q:「おかえり、はやぶさ」のゆるキャラくんはどうしてる?
[田村]
大気に溶けてしまいました。(会場笑)中身はこの会場にいますよ。壇上で元気にしゃべってます。


【最後に、皆さん一言ずつお願いします】
[川口]
「はやぶさ2」が地球に帰るのは12月。
「はやぶさ」が帰ったのが6月だから、間をとって「はやぶさの日」は08/23でいいんじゃないでしょうか。
「はやぶさ」運用室のセキュリティコードが8823だったし。(会場笑)

[國中]
セキュリティコード言っちゃダメだよねえ。(会場笑)
宇宙研はいろんなミッションやってます。来年はベピ・コロンボ打上げ、「はやぶさ2」のリュウグウ到着。
その後もSLIM、MMXなど。応援よろしくお願いします。

[田村]
何もないところから物をつくるのが映画屋さんのおもしろさ。
その過程で人間同士の化学反応が起きるのが映画のおもしろさだと思いながら見てください。

[菊池]
言いたくないし恥ずかしいけど会社に命令されて来たので……。
来週公開の水谷豊の映画よろしく!恥を忍んで!すみませんこんな話で!

[井上]
何かやってることがあって、いくところまでいかないとオチがつかない。オチをつける自分がどこまでやるか。
それが他の人に伝わる、共有されれば独りではなくなる。
一人でやれることには限界がある。みんなでやればブレイクスルーがあるのではないかと思う。

(第一部、以上。第二部に続く)



【関連】
ISASニュース 2011.12 No.369「映画3作品のプロデューサー、『はやぶさ』を語る」[PDF]
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